たごもりすメモ

コードとかその他の話とか。

iPhone4が便座にダイブしたがゲル漬け25時間で生還した件

去る8月20日金曜日の正午過ぎ、突如自分のiPhone4が大便器にダイブしました。
あまり綺麗な話ではないので詳細は省きますが洗浄ボタンを押したあとで便器内に物件は残っておらず*1、あまり汚れはしなかったもののドバドバ流れる水に数秒間さらされるという酷い状況にiPhone4はあえなく沈黙。電源を落とす画面がちらちら明滅したあとのことでした。あまりのショックに記憶が定かではないのですが、かなりデカい声で「ああああああああああああ」とか叫んでいたような気がします。隣のブースの人はどう思ったでしょうね。

応急処置 (12時31分)

で、数秒で救出はしたものの洗面台でいちおう洗ったこともあり画面は完全に沈黙。物理スイッチがないしバッテリも外せないしで、画面が暗いだけなのか電源が落ちてるのかもよくわからん。

ここでどうすべきかTwitterから群集の英知が得られたところによると「米びつに入れるんだ!」とのこと。乾燥剤がわりですか。社内にドライヤーも何もない以上、どうにかして調達せねばならん。とりあえず会社最寄りのコンビニを巡ってみたところ、2軒めのセブンイレブンにて米2kgを発見。お昼ど真ん中の時間帯に米2kgだけ買って帰る人間を店員さんはどう思ったことだろう。

そして当面可能な最善手として、沈黙するiPhone4は米の袋の中に突っ込まれた。

携帯乾燥機 → 失敗 (13時20分頃)

社内のIRCにて「ヨドバシに携帯電話の乾燥機が設置されているらしい」という話をゲットする。速攻でググるこれか。なにやら70%という数値が生々しく、復活に向けて期待を抱かせる内容となっている。これは期待するしかない。幸いにも会社は新宿西口のビルに入居しており、ヨドバシなら昼休みに歩いて行ける。ぐれーと。
ということで炎天下のなか、てくてくと歩いてヨドバシへ。暑い。そしてカバンが重い。米袋(2kg)ごと入れたからな。

ヨドバシに到着後、携帯電話売り場の店員さんに「あの水没した携帯電話用の乾燥機があると聞いたんですけど」と聞いたところ、「なに突然言ってるのこの人だいじょうぶ?」的な目で見られる。なんだそれ。知らんなら店頭に立ってんなボケ。こっちは暑さとショックで気が立ってるんだ。

その後どの店員さんに話を持っていったものか考えつつ店内をうろうろしていると、南館2Fの奥まったあたりにヒマそうなサービスカウンターがあるのを発見。声をかけてみると、すぐさま手続の準備をはじめた。なんでここではあんなにスムーズなのに店頭の人はダメなんだよ。いいかげんにしろ。とは思うものの、復活への期待がいやがおうにも高まるので文句など口からは出ようはずもない。
書類ですかいいですよ携帯置いていくんですしね電話番号ですか住所氏名ですかはいはいはい、と思いつつ、カバン(の中の米袋)からiPhone4を取り出す。

固まる店員。

iPhone4が米っぽいからじゃないよね。トイレで落としたということも分からないはず。ではなんだ。なにを固まっている。やめてくれ。遠のく復活の気配。「お客様、iPhoneはバッテリが取り外せないので、乾燥機で熱すると爆発の危険があってですね、たいへん申し訳ないのですが……」

ああ。

失意の彷徨 → 開き直り (13時30分頃)

呆然としつつ、会社に戻ろうとヨドバシを出る。外は暑い。鞄の中の米袋は重い。
ああそういえばあれこれ出てたはずだな、買わないと、と思ってブックファーストに寄るものの、買い物リストのあるRemember the MilkiPhoneが動かないので見られなくてまたダメージを受ける。こんな生活をいつまで続けることになるのだろう。耐えられない。

そんな感じで買い物をしていたのだが、ふと気付く。自分はまだ最善の手段をとっていない。何かできることがあるはずだ。自分だって東急ハンズには期待してたじゃないか……!

しかし時間はない。昼休みの1時間のうちに戻れるか。東急ハンズは山手線東側、新宿の繁華街の南端だ。会社は西口の北端。無理だ。それがわかっていながら東急ハンズへ行くのは会社員としてどうなのか? しかも自分はまだ試用期間中だ(ということをこのタイミングで思い出した)。
いやしかし、どうせこの状態では仕事に手などつくまい。午後の時間が数十分短くなろうとも、そこで後顧の憂いなく業務に打ち込めるよう、今こそはやるべきことを全力でやっておくべきだ!

ハンズ遠いよ、しかもなんでこんな売り場なんだよ (13時50分頃)

てくてくと歩く歩く。ハンズは遠い。談笑しながら歩く昼休みとおぼしき人々がムカつく。邪魔だ。暑い。鞄の中の米袋は重い。
真夏の昼日中には嫌がらせとしか思えないサザンテラスを歩き、ようやくハンズに到着。歩いている最中、iPhone4を分解して水気を拭き取った上で乾燥させればと思い付いたので、まずドライバーを探しにDIY売り場へと急ぐ。iPhone4のビスは星型でしかもかなり小さいが、ハンズならあるに違いないという盲信に近いものを頭に置いての猛進であった。*2

が、無い。まったくない。パッケージに入っているせいでよくわからないが在庫のうち最も細そうなものでも見た目から合うようには見えない。この時点で分解については諦めていたものの、念の為細い方から2本を購入。これはどうせ途中で思い付いたものだから、と自分をなぐさめつつ。
次に乾燥剤を探す。無い。DIYでは乾燥剤というものは使わないのであったか? よくわからんので店員さんに質問。店内用とおぼしきPHS(に見える何か)を取り出し、どこかと会話をはじめる。延々しゃべってる。2分くらいしゃべってた。電話の向こう側の人が延々何かを言っているのだが、こちら側の店員さんは相槌をうつばかりであまり何かを言うわけでもない。乾燥剤ってそんなにいろいろあるのか。俺はとにかく強力なのが欲しいだけなんだが。なんなら指についただけで水分が抜けるくらいの危険そうなやつでもいいぞ。
店員さん、通話終わる。「7階にあるそうです」。それだけか。あれだけ色々と聞いていた内容はなんだったんだ。なにか大事な情報がさまざまに濾過されてしまったような気がするのだが。絡んでもしょうがないのでエスカレーターへ。

7階で探す。無い。「理化学用品」といういかにもなコーナーがあったので探してみるのだが、ない。なぜだ。騙されたのか。伝えてもらえなかったところに大事な情報があったのか。
諦めて店員さんに聞いてみたところ「お探しのものは押し花用のですか」。押し花なんかしねえよ!と叫びそうになったものの、耐えがたきを耐えて「ああまあそんな感じの乾燥剤を」と返す。顔はひきつっていたのではなかろうか。現状iPhone4は鞄の中で米袋の中だ。米扱いされるのであれば、その次が押し花扱いでも無理からぬことかもしれん。復活するなら文句はないぞ。
案内されて行ったところには、ついに念願の乾燥剤が! ここまで来て置いてあったのがただのシリカゲルだったのがちょっと残念感を増幅させるが、しかし小分けにされた袋のものとは別に、大きい袋にみっしりとシリカゲルが詰まった製品もある。これだ。これが欲しかったんだ。

しかしなんで押し花なんだよ。乾燥剤を求める人は押し花コーナーへ。これ豆知識な。

復活せず失意と諦念の夕方 (17時から18時頃)

あああ時間がまずい感じ、と思いつつもiPhoneが無いので現在の時刻がわからないなか、ハンズから延々歩いて会社へと戻る。新宿西口は南北に移動しようと思うと地下道がロクに使えず、地上を移動するしかない。暑い。鞄の中の米袋は重い。
会社に戻ると時間はかなりアレなことになっていたが、見ないフリをしてiPhone4の処置にとりかかる。周囲のみなさまも今日ばかりは見ないフリをしてくれるに違いない。
まずドライバーを試したが、これは予想通りダメ。もっと細いものが必要なようだ。さっさと諦めてシリカゲルを取り出す。袋はジップロックになっており、iPhoneを投入したあとに密封してより効率的に内部の空気を乾燥させてくれるという構造だ*3。すばらしい。iPhone4を米袋から取り出すと、イヤホンジャックとコネクタ部分に米粒が詰まっているのでそれらを除去のうえ、シリカゲル袋に投入。できるだけ内部の空気を少なくした上でジップロックを閉め、完全密封を試みた。

午後、散漫になりそうなのを抑えつつなんとか仕事。途中、効果のほどは定かではないが何もせずにはいられず、水滴が偏ったりしないようiPhoneをシリカゲル袋ごと倒立させてみたり横倒しにしてみたり裏返しにしてみたり。
仕事はするものの不幸な気分は拭いようがなく、夏休み中だが渋滞にハマった友人を煽ってみたり、不毛な時間が続く。

17時頃、ついに耐えきれなくなり、通電を試みる。シリカゲル袋からiPhone4を取り出すと、なんか微妙に粉っぽい。拭けばどうにかなりそうだったのであまり気にしないことにする。電源投入。通電したようにディスプレイ全体がちらっと明るくなるものの、一瞬だけのことで、すぐにまたブラックアウト。駄目か……。よく見てみたらカメラのレンズ部分(内側)にも細かい水滴がついてたりして、いかにもダメな感じ。
そのうちTwitter経由で、水没iPhoneでも修理に持ち込めばなんとかなる、という話をゲットする。すかさずググると、おお、本当だ。すばらしい。新品を買い直すことまでほぼ覚悟していたので、これは安い。しかも新品購入だと2〜3週間待ちらしいが、修理(という名の交換対応)なら現品があれば即座に代替機を手にできる。
何も考えず、銀座AppleStoreのGeniusBarの予約画面を開く。なんと翌日土曜の午後に予約が取れるではないか。天佑とはこのことか。混んでないのかな最近は。22800円は諦めることにしよう。もはやiPhoneなしでは生きられない。実は自宅にiPhone4購入前に使ってた3GSはある*4のだが、ちょうど前夜に3GSの液晶を見て「こんな粗い画面はもうきっついなー」と再確認したところであった。ひどいタイミングだ。

いまさら都心で迷い、無力っぷりをさらす (20時頃)

その夜はちょうど飲みにいく約束があった。場所は神田のビアバー。行ったことのない場所だが、Googleカレンダーに店の住所とWebのURLを付記して放り込んであるから、それを見ながら行けば迷うはずもない。iPhoneがあれば。
そして迷った。なんとなく覚えてた場所と淡路町駅で見た周辺地図を頼りに歩いたところ近くまでは行っていたのだが、最後の最後の交差点で逆方向に行ってしまったらしい。ああ、なんという情報弱者。おれはもうだめだ。

ちなみに前々職の会社のひととの飲み会(内容は仕事とはまるで関係なし)だったのだが、昼間に会社では水没が散々ネタにされていたらしい。酷い人達ですね。
飲みに飲んでタクシーで帰宅。ばったり倒れる。

新しい朝がきた、希望の朝だ (翌朝 土曜10時)

GeniusBarの予約は12時半、その前に散髪に行かないと、と思いつつ起きる。期待せずにシリカゲル袋からiPhone4を取り出す。電源スイッチ押す。

起動した! マジで! やっほー!

なんかごく普通に動いてる。ディスプレイにちょっと水滴が入りこんだような滲みがあるが、それ以外はまったく問題ない。びっくりするくらい普通に動作しとる。なんだこの嬉しい出来事は。この時点でGeniusBarの予約はキャンセルした。どう考えてもこのままの完全復活に賭けるのが正道だろう。
とはいえディスプレイの滲みは悲しい。もうしばらくシリカゲル袋に入れておくべきか、と電源を落として再度封入。

完・全・復・活……! (土曜13時)

散髪から戻り、文庫本を1冊読みふけったのちに再度電源を投入してみる。ディスプレイの滲みは無い。イヤホンジャックからシリカゲル玉を除去してイヤホンつっこんでみたところ、普通に音も聴こえる。スピーカーもOK。Bluetoothヘッドセットの接続も問題なし。カメラもメイン・サブともに大丈夫。すばらしい!
ここに25時間にわたる絶望は去った。ティッシュペーパーとメガネクリーナーで丁寧にシリカゲル粉を拭き去られたiPhone4はまさに希望のデバイスそのものに見えた。ああ、失ってわかる偉大さよ。俺には君が必要だ。

今回の教訓

ジーンズの尻ポケットにiPhoneは危険

トイレではもう二度とやらない。
とはいえスーツ着ない生活になって改めて思ったのだが、ジーンズのポケット以外に携帯入れておく場所ってないんだよね。どーすっかなあ。

乾燥は24時間は待て

「携帯 水没」とかでググってると、乾燥開始してから24時間は待て、みたいな記事がたいへん多いのだが、あれは本当のことであった。
数時間じゃ本当にダメなんだね。17時時点で通電を試みたときに「これでトドメが」みたいなtweetがいくつか来たものであったが、はい、反省してます。とはいえほぼ諦めてたからダメもとって気分だったんだけど。

あと翌日になって急激に状況が改善したのは、気温のせいもあるんじゃないかなと思う。そりゃクーラーききまくって快適な事務所内より、30度以上の温室(俺の部屋だ)の方が水滴の蒸発は早かろう。空気が乾燥してることが保証されてる(シリカゲル袋の中)ならね。
だから水没携帯を乾燥させるときは日向にでも置いておくといいかもしれない。

シリカゲルは常備しておけ

みなさんこちらが今回の立て役者「ドライフラワー用シリカゲル 300g 525円」様です……!

マジ大切。スマートフォンがどうとか言う会社は欠かさず常備すべき。生死を分ける。もう二度と手放せません。「ドライフラワー用」とありますが、そのようなことは些細な問題です。

*1:少なくとも目視できる範囲では

*2:実際には、iPhone4のビスに合うドライバーは現状ではほとんど出回っていないらしい。ちょっとググればわかることではあるのだが、もちろんiPhoneが沈黙している路上では為す術はない。

*3:多分本来の設計としては狙いは違うと思うが

*4:いいかげん不要なんで売ろうかな、と初期化して箱に詰めたところだった!